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しんしんと

風呂上がり。深夜。

 

42℃のシャワーで火照ったからだをバスコニーで冷ましている。

 

顔面に白いパックを貼っつけているので、通行人に見つかったらお化けだと驚かせてしまうかもしれない。休日深夜の道路はタクシーとトラック数台。静かな夜だ。車で遠征していた頃の帰り道を思い出す。

 

濡れたままの髪を、2℃の空気がすり抜ける。サンダルをつっかけた裸足の指先が冷たくなっていく。心地よい冷気。

 

随分と遠いところまで来たものだ。普段はあまり意識しないけれど、「上京」という言葉がふと身に染みるときがある。例えば、夕暮れどきの電車から街並みを眺めるとき。例えば、道路標識の矢印の先に東京の地名を見るとき。

 

行く宛も、戻る宛もないけれど、だからこそどこへだって行けるのだろう。

 

湯冷めする前に部屋に戻ろう。