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決意の日

ついに、この時がきたようだ。

 

わたしは買ってしまった。

いや、買わざるを得なかったのだ。

 

引っ越してから約半年。

醤油とポン酢だけでは、もうやっていけないのだ。

 

もちろん、九州うまくち醤油のコク深い味わいも、ポン酢のサッパリとした味わいも十分に楽しむことができる。

 

しかし、それだけではこの生活が破綻してしまう。そんな恐れすらも孕みはじめている。

 

今日という日をもって、わたしはかつてのわたしではなくなるのだろう。まあ、仕方のないことだ。

 

 

スーパーに赴いたわたしは夕暮れどきの混み合う生鮮食品売場を颯爽とかき分け、もやしを手にした。

 

そしてクルリと身をひるがえし、裸眼でぼやける視界の先に「たれ」と書かれた売場を見つけた。迷うことなく、真っ直ぐに進む。もやしを片手に、真っ直ぐに。

 

そして。

 

お目当てのブツを手に取り、そのままレジへ。途中の惣菜コーナーにも、レジ横の和菓子にも目をくれず、バーコードが通る瞬間を見守る。

 

 

「ポイントカードは?」

「ありません。」

「お会計180円です。」

230円で。」

50円とレシートのお返しです。」

「ありがとうございます。」

 

 

こうして手に入れたブツともやしを持っていた袋にコソコソと詰め、弾む心に身を任せ駆け足で帰宅。冷蔵庫に安置しホッと息をつく。

 

 

いま、冷蔵庫の2段目に鎮座する焼肉のたれを眺め、わたしは満足している。

 

 

 

甘口にしてやった。ふふん。