ここ1週間ほどめちゃくちゃ顔がかゆい。赤く腫れて少しヒリヒリもする。元々肌が弱いので、化粧品や洗顔料が合わないとすぐにこうなってしまう。あと黄砂や花粉でも。しかし、今回は特に化粧品を変えていないし、外出もしていない。この部屋に飛んでいるのはWi_Fiくらいだ。ではなぜなのか。
分からないまま数日が過ぎ、いつものように夕方ごろ目覚めた私はハッとした。これだ。うつ伏せで顔をべったりとつけているこのぬいぐるみだ。ちょうど肌が荒れる少し前から、枕の上に追い枕としてぬいぐるみを設置していたのだ。私は飛び起き「お前かああああ」と叫ぶことはせず、ぬいぐるみを枕の横に退けてもう一眠りした。
原因が判明し、取り除くことができたなら後は回復を待つのみだ。これがまたつらいものである。化粧をするかしないか毎日葛藤し、したところでなんだかパサパサした仕上がりになる。そしてかゆい。
歯が痛くてちょー苛々する!って書いている文豪がいたなあ。あれは坂口安吾だったかしら。
今日は昼過ぎから野暮用でどうしても化粧をしなければならなかった。仕方なく粉をはたき、仕上がった顔面を丸ごと覆い隠すようなマスクをつけて外に出た。カーテンを開けない生活なので気が付かなかったが、とても天気がいい。お天道さんはありがてえ。ぽかぽか陽気と冷たい風、どこかの家庭からお昼ごはんの卵焼きが香る。
外に出るまでは億劫だけれど、出てしまえばこっちのもんだ。喫茶店に行って、帰りにお野菜を買って帰ろう。せっかくなのでお気に入りのパン屋さんにも行こうかしら。いやいやもっとせっかくなので電車に乗って遠くまで行ってみようかしら。
浮き足立つ私はふと我に帰る。顔がかゆい!化粧ノリの悪い顔ではどこへ行ったって仕方がない。「女は、一瞬間一瞬間の、せめて美しさのよろこびだけで生きているのだもの。」前回すこし触れた太宰の「皮膚と心」にも、こんな一節がある。
野暮用が済んだら喫茶店で珈琲を飲んで、大人しく家に帰ろう。